INFORMATION司法書士の開業ノウハウ

2017.12.06

司法書士事務所 独立開業の「ヒト」「カネ」「モノ」 その12

職員の採用・雇用 ~ 各種保険の負担

司法書士事務所を開業した直後は仕事もそこまで多くなく、一人で業務を行う方が多いと思いますが、ある程度軌道に乗って業務量が増えてくると、一人で全ての業務をこなすのが厳しくなってきます。
そこで、人を雇い入れて業務を分担することが考えられます。
もっとも、人を雇い入れるといっても、色々なパターンがあります。
正社員なのか契約社員なのか、フルタイムなのかパートなのか……。
業務内容や業務量、必要経費(人件費)に応じて、どのようなパターンで雇い入れるかが変わってきます。
そこで、まず、その前提となる知識・情報についてご紹介させていただきます。

1.労災保険
労働者を雇い入れる場合、労災保険に加入する必要があります。
仕事中や通勤中に怪我等をした場合に保障を受けられるものです。
人を雇い入れた場合、労災は必ず加入する必要があります。
ただし、従業員が同居の親族の場合は原則として加入できません(加入は不要です)。
また、原則として経営者(個人事業主・法人の役員)も加入できません(例外として特別加入という制度があります)。
保険料は全額事業主負担です。
保険料率は業種によって異なりますが、司法書士事務所の場合は3/1,000(平成29年度)です。
つまり、労働者に支払った給料の総額×3/1,000を保険料として収めることになります。
例えば、パート1人を時給1,000円で1日4時間、週3日の条件で雇った場合、
給料の1年間の総額は1,000円×4時間×3日×年52週=624,000円
になりますので、労災保険料は年間で、
624,000円×3/1,000=1,872円
となります。

2雇用保険
一定の条件(下記①かつ②)を充たす場合、雇用保険への加入が義務付けられます。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること → 月87時間が目安
②31日以上の雇用見込みがあること
雇用保険料はいわゆる失業保険等の財源になります。
正社員ではなく短時間のパートであっても(例えば1日5時間、週4日)、雇用保険への加入が必須になる場合があります。
保険料は事業主と労働者の両方が負担します。
保険料率は業種によって異なりますが、司法書士事務所の場合は、事業主6/1,000、労働者3/1,000(平成29年度)です。
労働者負担分は毎月の給料から控除(天引き)する形で事業主が徴収し、年に1回事業主負担分と併せて労災保険料と一緒に納付することになります。
例えば、パート1人を時給1,000円で1日5時間、週4日の条件で雇った場合、
給料の1年間の総額は1,000円×5時間×4日×年52週=1,040,000円
になりますので、雇用保険料の事業主負担分は年間で、
1,040,000円×6/1,000=6,240円
となります。

ちなみに、労災保険と雇用保険を併せて労働保険といいますが、労働保険料は概算保険料という形で先に支払い、毎年、前年度分の確定保険料と概算保険料との差額に翌年度分の概算保険料を併せて支払うという形を取っています。

3社会保険(健康保険、厚生年金保険)
社会保険料の事業主負担分は半分です。
保険料率は厚生年金保険料率18.3%、健康保険料率10%前後(都道府県によって異なる、全国健康保険協会の場合)となっており、負担の大きいものとなっています。
(40歳以上65歳未満の場合はさらに介護保険料も必要になります。)
例えば、月給20万円の職員を雇い入れる場合、事業主負担分は、
20万円×12ヶ月×(18.3%+約10%)×1/2≒約34万円
とかなりの負担になります。
(都道府県の違いや介護保険の有無、子ども・子育て拠出金、計算方法による端数の誤差等ありますので厳密な計算ではありません)

社会保険の加入義務については、まずそもそも社会保険に加入しなければならない事業所なのか?という問題と、個別の労働者が加入する必要があるか?という2つの問題があります。
①そもそも社会保険に加入しなければならない事業所なのか?
・法人の場合(司法書士法人の場合)
強制適用事業所となります。
条件を充たす労働者がいる場合、加入しなければなりません。
経営者(社員)も加入することになります。
・個人事務所の場合
法人でない個人事務所の場合、任意適用事業所となります。
社会保険に加入してもしなくてもどちらでもかまいません。
ただし、社会保険に加入した場合でも、事業主は加入できません(国民年金と国民健康保険に加入することになります)。

②個別の労働者が加入する必要があるか?
所定労働時間と労働日数が正社員の3/4以上の場合には加入する必要があるとされています。
通常、正社員は週40時間勤務というところが多いと思いますので、おおむね週30時間以上勤務する労働者はパートや契約社員であっても社会保険に加入する必要があることになります。

以上ざっくりとではありますが、労働保険と社会保険についてご案内させていただきました。
細かい定義・条件はありますので、厳密には異なる箇所もございますが。大枠はご理解いただけたかと思います。
勤務時代やサラリーマン時代は「手取り少ないな~」と不満を言っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、事業主は額面以上の負担をしていたということなんです。
そして、今後独立開業されて”経営者”になられる先生方にとっては、頭を悩ませる問題になってきます。
次回は、今回のお話を前提に、職員採用のあれこれについてもう少しお話させていただければと思います。

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