1 司法書士にとってミスは命取りになりうる

1 登記ミスでありがちなパターン
1つの登記申請を通すために、事前にいくつかの登記申請を、順を追って通す必要があることがあります。このとき事前に通しておく必要がある登記申請を怠ると、その登記を必要とするあとの登記申請が通りません。 住宅の売買で売主と買主がともにローンを組んでいる場合、売主の登記上の住所を売主の新しい住所に変更しておかなければ、買主に所有権を移したり、ローンにともなう抵当権を取消したり、設定したりする登記申請が通りません。2 司法書士を訴えたい?
司法書士が登記の際に本人確認を怠ったことが原因で、多額の損害を被った事例を紹介します。相談を受けた弁護士は、司法書士に損害賠償を請求するべきだと回答しています。 Aさんは、自分が知らない間に、自分名義のマンションを、妻との共有名義に変更されました。その後、妻と離婚し、マンションからも出たので、マンションを手放したいと考えました。しかし、共有名義が障害となり売却できません。Aさんは、だれも住んでいないマンションのローンを払い続けています。 マンションの名義変更は、印鑑証明の持ち出しや替え玉によって行われました。相談を「受けた弁護士は、損害賠償の責任は、元妻だけではなく、本人確認でミスした司法書士にもあると回答しています。3 司法書士が多額の賠償判決が下された事例
司法書士に対して、多額の損害賠償責任を認める判決が下された事例の概略をご紹介します。 ある人物Cになりすました別の人物Dが、Cが所有しているとする土地を担保として、会社Xに対して借金を申し込みました。Xは司法書士Yに対して、Cの土地に対する担保登記を依頼します。Yは書類の精査を怠ったため、運転免許証、印鑑証明書、登記権利証が偽造されていることを見抜けず、土地がCの所有物であるとして担保登記を申請します。Yからの電話連絡によって、Yが申請したことを知ったXは、Cを自称するDに対してお金を貸し付けます。しかし、法務局は書類不備により申請を却下しました。その後、損害を被ったXは、Dを詐欺罪で告訴し、Yにも過失があるとして損害賠償を請求しました。 判決によると、代理行為をする者は本人確認をする義務があり、司法書士が報酬を得ていること、専門性の高い地位にあること、本人確認は司法書士の重要な事務であること、本人確認が不十分だったことなどを理由として、司法書士に損害賠償責任があると判断しました。諸事情を考慮して、8割5分の過失相殺が相当であるとして、3,113万円余の賠償責任があると判決しました。2 ミスを防ぐための傾向と対策

1 顧客の話をよく聞く
相手の話を最後まで聞かずに早合点し、相手の理解と自分の理解を合わせる努力を怠る傾向がある人は、理解のズレからミスを犯しがちです。そうした傾向がある人は、常日頃から相手の話をよく聞くように心掛ける必要があります。ほかに、用語の意味を逐一確認し、相手に自分の理解をチェックしてもらうことでも、理解のズレを正すことができます。2 仕事のムラを減らす
とりあえず目の前にあることから手をつけて仕事をしていると、スケジュールが乱れ、時間をかけるべき業務を短時間でやる羽目になりがちです。仕事の段取りが悪ければ、あとから修正が必要となり、同じ仕事を何度も繰り返すことになるかもしれません。無理に仕事を詰め込んだり、修正を繰り返したりすることは、ミスの誘因になります。仕事のムラをなくすためには、ToDoリストを作成すること、仕事に優先度をつけること、手順を決めてから仕事に取り掛かることが有効です。3 忘れないようにする
やるべきことを忘れてしまえば当然ミスが増えます。忘れやすい人は、メモを取ることを怠る傾向や、身の回りが雑然としている傾向があります。この仕事はどういう段取りで行うかをあらかじめ決めておいたり、メモを取ることを習慣化したりすれば、忘れてミスをすることを防げます。忘れないようにするためには、仕事の仕組化が有効です。4 システムを導入する
法改正に対応、登記など最新の情報を反映、正確な書類作成と申請体制をつくるため、システムの導入は必須と言っても過言ではありません。データと書類作成を連動したシステムで業務の効率化を実現、補正を減らすことができます。業務が増えてきても、システムがあると時間短縮もできます。生産性を上げて、より価値のある仕事や事務所の拡大にリソースを使いましょう。
3 集中力を高める方法をご紹介
