司法書士業界は価格競争が激化し、単純な登記業務だけでは利益を確保しにくい時代になっています。
今後の成長には「案件の量」よりも「1件あたりの価値」を高める視点が欠かせません。
その鍵となるのが、提案型サービスへの転換と、顧客の困りごとを包括的に解決する体制づくりです。
提案型サービスへの転換がもたらす価値
従来の司法書士業務は、依頼を受けた登記を正確・迅速に行う「受動的サービス」が中心でした。
しかし今後は、「依頼を待つ」から「課題を提案する」司法書士へと変わることが、事務所の差別化と単価アップのポイントになります。
例1:相続登記+遺言書作成サポート
相続登記を依頼されるお客様の多くは、「遺言書がなくて困った」「今後の相続が心配」と感じています。
そこで、登記完了後に「今後の相続対策として遺言書の作成をサポートします」と提案すれば、
単なる登記手続きから、“予防法務型サービス”に発展させられます。
相続登記報酬に遺言書作成支援が加わると顧客単価を上げられるばかりでなく、顧客満足も高く、リピートや紹介にもつながりやすい仕事をすることができます。
例2:商業登記+補助金・法人運営アドバイス
会社設立登記を依頼されるお客様は、設立後の経営・資金繰りに不安を持っています。
そこで、「創業時に活用できる補助金・助成金情報」「役員変更・定款見直しサポート」などをセットで提案することで、“経営支援型司法書士”として信頼を獲得できます。
このような提案型サービスは、単価を上げるだけでなく、顧客から「頼れる存在」としての関係性を強化し、長いお付き合いを見据えた関係性を構築できます。
顧客の困りごとを“包括的に解決”する視点
単価アップの本質は「値上げ」ではなく、「お客様にとっての価値を広げる」ことにあります。
そのためには、登記という“点”ではなく、ライフイベント全体を見渡す“線”でのサポートが重要です。
相続分野の場合
登記だけでなく、戸籍収集・財産調査・遺産分割協議書の作成、税理士との連携による相続税申告支援、不動産売却や空き家対策までフォローといった流れで、顧客が抱える一連の手続きを“ワンストップ”で支援できることを提案します。
企業法務分野の場合
設立・増資・役員変更・本店移転などの登記に加え、顧問契約や商号変更、株主総会書類の整備、コンプライアンスチェックまで支援といった“法人サポートパッケージ”を設けると、安定した継続収益につなげていくことができ、経営者同士のつながりでも紹介されやすくなります。
「ワンストップ相談所」としてのポジショニング
顧客が司法書士を探すとき、必ずしも「登記」という単語から入るわけではありません。また司法書士がどういったことができるのかをすべて理解しているわけでもありません。
「相続の手続きで困っている」「会社を作りたい」「不動産を整理したい」など、“悩みベース”で相談先を探すケースがほとんどです。
そこで、ホームページやパンフレット、相談会などの発信において、「登記の専門家」ではなく「相続・法人の手続きをトータルで解決できる専門相談所」として打ち出すと、他事務所との差別化が明確になります。
例えば「登記だけで終わらない、相続手続きの総合窓口」「会社設立から経営まで伴走する司法書士事務所」などこのようなコピーは、SEO対策上も「相続 手続き 相談」「会社設立 サポート」など検索ニーズの高いキーワードにマッチします。
高付加価値化のための実践ステップ
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 顧客の課題を整理 | 依頼の背景・将来の悩みをヒアリング | 提案の切り口を発見 |
| ② セット提案を設計 | 登記+関連支援(遺言書・補助金・顧問契約など) | 単価アップ・満足度向上 |
| ③ サービスを可視化 | パンフ・Web・相談会などで発信 | 新規顧客への訴求 |
| ④ システムで効率化 | 「司法くん」など業務支援システムで書類作成・案件管理を自動化 | 利益率維持 |
まとめ:司法書士は「手続きの人」から「提案する専門家」へ
今後の司法書士事務所経営で重要なのは、依頼を待つ受動的な姿勢から、課題を先回りして提案する能動的な姿勢への転換です。
登記+α」のサービスを設計し、顧客の人生・事業を支える“総合パートナー”として位置づけることで、単価アップと顧客満足を同時に実現できます。
頼れる司法書士としてのブランドを確立し、継続的な紹介・新規獲得につなげていきましょう。
