司法書士の資格を持っている方の中には、最初の独立は自宅で、と考える方も多いのではないでしょうか。小さく始めたいのであれば、自宅開業には大きなメリットがあります。この記事では、司法書士が自宅で独立するメリットとデメリットをご紹介します。また、自宅で独立するときのノウハウも併せて解説していきます。
1 自宅で独立するメリットとデメリット
自宅で独立すれば、独立の準備にかかる時間や費用を大きく削減できます。自宅と事務所の移動時間がないので、家族と過ごせる時間も長く取れます。その一方で、自宅での独立にはインフラやセキュリティ、顧客の信頼獲得に問題を抱えがちです。自宅の場所によっては集客が難しくなります。また、仕事と生活のメリハリがつけにくくなる、自宅を改修しないと使えないといった問題が生じることもあります。
1 自宅で独立するメリット
自宅で独立すれば、物件を探す時間がかからないのですぐに独立することができます。司法書士の開業費用のうちで、最も大きな部分を占める物件費用がかからないので、開業資金を大幅に削減できます。また、すぐに家族に会えるので、家族と過ごす時間を長くとることが可能です。
メリット① すぐに独立できる
自宅であれば物件を探す手間が省けます。パソコンやプリンター、インターネット環境、電話なども既存のもので間にあう場合が多いでしょう。基本的な設備がはじめからそろっている場合、すぐに独立して、他のものは必要になった時点で揃えればよいでしょう。
メリット② 開業資金を抑えられる
物件を借りて独立する場合、礼金・敷金に加えて少なくとも半年分の家賃を用意することになります。司法書士は特別な機械や設備をほとんど必要としない職業なので、この物件にかかる費用が、独立にかかる費用の中でもっとも大きな部分を占めます。自宅で独立すれば、そこにお金がかからないため、開業資金を大幅に抑えられます。
メリット③ 家族と過ごせる時間が長い
自宅で独立すれば、通勤時間もかかりません。その時間を家族と過ごすことができます。仕事の合間に家族の様子を見に行くこともできるので、やり方によっては、家族と過ごす時間を大幅に増やすことも可能です。育児や介護がある場合、自宅での独立は大きな助けになります。
2 自宅で独立するデメリット
自宅はもともとオフィスとして使うことを想定していないので、インフラやセキュリティが弱い場合が多いです。自宅での独立は、外聞的にも、見た目的にも、顧客の信頼を得にくいかもしれません。自宅で独立すると仕事とプライベートの区別をつけにくくなります。また、自宅をそのままでは使えず、改修する必要があるかもしれません。
デメリット① インフラやセキュリティが弱い
一般の住宅はオフィスに比べて電源容量が小さかったり、インターネットの回線速度が遅かったりすることが多いです。また自分で管理しなければならないので、手入れが行き届かなくなりがちです。常に気をつけていないと、家族が書類を誤って捨ててしまうような事態が起きかねません。さらに、自宅の住所が広く公表されてしまうという問題もあります。
デメリット② 顧客の信頼が得にくい
自宅で開業していると、十分に稼げていないから事務所が持てないのだと考え、実務能力に疑問を持つ顧客もでてきます。見た目の印象はやはり大事なので、自宅開業は事務所がある場合よりも顧客の信頼を得にくいでしょう。案件によっては顧客のプライバシーを守るための接客スペースが必要になるかもしれません。
デメリット③ 場所がよくないと集客が難しい
自宅が奥まった場所にあると、不便を感じて来るのをためらうことになりがちです。わかりにくい場所にあると、それだけで来るのをやめてしまうかもしれません。また住居が少ないエリアや商業エリアから遠い場所だと集客が難しい場合もあります。
デメリット④ 仕事とプライベートの区別が難しい
自宅で開業することで、仕事とプライベートの境界があいまいになりがちです。はじめはしっかりと区別をつけていても、営業時間外にだらだらと仕事をしてしまったり、仕事中に家の用事が緊急に入り、そのまま仕事に戻らなくなったりすることがあり得ます。土日対応の業務が出てきた場合に家族が協力できるかどうかも考えなければなりません。
デメリット⑤ 自宅を改修する必要があるかもしれない
自宅の一室一室をそのまま事務所として使えればよいのですが、場合によっては自宅の改修が必要になるかもしれません。改修費用が高くつくのであれば、物件を借りたほうが良い場合もあります。
2 自宅で独立するときのノウハウ
自宅で独立する場合、開業費用と固定費がともに安く抑えられます。それでも、費用を上回るだけの売上があるかを、あらかじめ調査する必要があります。自宅で独立する場合、自分が動き回る機動力を中心に強みを作るのが良いでしょう。手早く独立した後に、エネルギッシュに試行錯誤を繰り返して、事業の勝ちパターンを見つけましょう。
1 市場を調査して立地を確認する
事務所を借りる場合、物件周辺の土地にどのような仕事があるのか、競争相手はどれだけいるのかを確認して、実際に経営が成り立つかどうかを確認するのは当然のことです。自宅で独立するときでもこのことは変わりません。独立費用を抑えるためだけで自宅を選んではいけません。
自宅以外の選択肢も考える
自宅で独立した場合の事業の収支をシミュレーションしてみて、成り立つ見込みが見えない場合は自宅以外の選択肢も考えましょう。テナントで独立するのはお金がかかりますが、レンタルオフィスを使うと利便性の高い場所で安く独立できる場合があります。自治体の開業支援として、レンタルオフィスなどの設備を安く提供してくれることもあります。
2 事業をイメージする
具体的にどのように仕事をこなしていくのか、頭の中でイメージしてみましょう。もし自宅の応接室が狭いのであれば、できるだけ自分から顧客に会いに行き、作業を自宅で行う事業形態にする、といった工夫が必要になるかもしれません。
3 事業のどこに強みがあるのか
顧客に選んでもらうためには強みが必要です。自宅の一室をオフィスとするわけですから、見栄えの良さや使いやすさは大きな強みにはなりません。自分が動く機動性を中心とした強みづくりを考えてみましょう。
4 営業戦略を考える
自分が動くことを営業の中心とするわけですから、一般顧客を相手に集客するよりも、不動産会社や銀行に営業をかけ、登記の仕事を紹介してもらうほうが合理的かもしれません。そのように判断したら、周囲の不動産会社や銀行に対して、どのような方法で営業するのかを考えます。
5 事業を計画する
ここまで考えたうえで、これまでイメージとして考えてきたことを、数字が入った計画の形にまとめます。独立した月からの月ごとの営業件数、成約見込み、受注件数、売上金額、事務所のランニングコスト、生活費などを予想します。はじめは赤字であっても、どこかの段階で黒字に転じなければなりません。
6 独立するための資金を集める
事業計画が完成したら、それを実現するための資金を集めます。自宅で独立するので、初期費用は少なくて済み、その後に事務所の家賃もかかりません。自宅開業は初期費用と固定費がともに少ないのです。自分で貯金したお金だけで資金が足りる場合が多いでしょう。
7 物品を集める
自宅で独立する場合でも、いくらかの物品は新たに必要になる場合が多いでしょう。応接テーブルやソファーが必要かもしれませんし、より早く、多く印刷できるプリンターが必要になるかもしれません。紙や封筒などの消耗品を揃える必要もあります。
8 届出を怠らない
独立するためには司法書士会への届出が必要です。これにはお金と時間がかかるので早めに準備しましょう。また、開業届、銀行口座の開設、クレジットカードへの加入なども必要です。事務所のお金と個人のお金を一緒にすると、経費と個人の出費がわかりにくくなってしまいます。
9 独立後は事業が軌道に乗るまで試行錯誤を続ける
自宅で独立する場合、事業を始めるまでにそれほどお金を使っていないはずです。開業後も家賃を払わないので、固定費も安くなります。このため、自宅で独立した場合、容易に計画を変更できます。事業が軌道に乗るまでエネルギッシュに試行錯誤を続けましょう。ただし、一つの試みをあまりにも短い間隔でやめてしまうと、効果があるのかわからなくなるので注意しましょう。効果を見極めるために辛抱することも重要です。
3 まとめ
司法書士が自宅で独立する最大のメリットは、独立に必要な時間とお金を大幅に節約できることです。しかし、自宅の場所が悪く集客に苦労したり、顧客の信頼を得にくくなったりといったデメリットもあります。事務所を構えるまでのステップとして自宅開業を予定する場合もあるでしょう。自宅で独立すると毎月の固定費も安くなりますが、売上がいらなくなるわけではありません。あらかじめ立地や強みについてよく考え、計画的に事業を始めましょう。独立後は、ランニングコストがあまりかからないメリットを活かして、スピーディーに試行錯誤を繰り返しながら、事務所が存続できる勝ちパターンを見つけましょう。
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