大切な依頼者情報を守るためにできること
司法書士事務所には、登記情報や戸籍、住民票、遺言書、不動産や会社に関する情報など、多くの重要な個人情報が集まります。
「うちは小さな事務所だから狙われない」
「ウイルス対策ソフトを入れているから大丈夫」
そう考えているとしたら危険です。
近年は、大企業だけではなく、従業員数の少ない事務所や士業もサイバー攻撃の標的となっています。特にランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する攻撃)は、中小企業への被害が増加しており、企業規模を問わず対策が求められています。
司法書士は守秘義務を負う専門職だからこそ、セキュリティ対策は「IT担当者の仕事」ではなく、事務所全体で取り組むべき重要な業務です。
1. パソコンは常に最新の状態にする
最も基本でありながら、最も重要なのがアップデートです。WindowsやmacOS、Microsoft Officeなどには、日々セキュリティ上の弱点(脆弱性)が発見されています。
更新を後回しにしていると、その弱点を狙われてしまいます。「あとで更新しよう」が一番危険です。チェックポイントとして以下を徹底しましょう。
・Windows Updateを自動更新にする
・ブラウザを最新版にする
・PDFソフトも最新版に更新する
・業務ソフトも最新版を利用する
2. パスワードは使い回さない
司法書士事務所では、メール、クラウドサービス、登記関連システム、会計ソフト、ネットバンキングなど、多くのインターネットサービスを利用しています。
すべて同じパスワードにしていると、一つ漏えいしただけで全て突破される可能性があります。多要素認証(MFA)も利用できるサービスでは積極的に有効化することが推奨されています。
以下を参考にパスワードの見直しを行いましょう。
・長く複雑なパスワード
・サービスごとに別のパスワード
・パスワード管理ソフトを活用
・二段階認証を必ず設定
3. メールの添付ファイルは慎重に
最近の攻撃は非常に巧妙です。
例えば、宅配業者、金融機関、法務関係取引先を装ったメールが届き、添付ファイルを開くだけで感染するケースもあります。
「急いで確認してください」
「請求書です」
「契約書をご確認ください」
このような文面ほど、一度立ち止まって確認しましょう。
4. バックアップは”復元できる”ことが重要
バックアップを取っていても、「実際には復元できなかった」というケースは少なくありません。
また、パソコンと常時接続された外付けHDDだけでは、ランサムウェア感染時に一緒に暗号化される恐れがあります。ネットワークから切り離したバックアップや、編集・削除されにくい方法での保管が重要です。
理想はクラウドバックアップ、外部保存、そして定期的な復元テストが必要です。
特にオンラインバックアップなど導入がまだの方は早めに検討しましょう。
5. USBメモリの管理を徹底する
便利だからこそ注意が必要です。USBメモリの紛失は、そのまま情報漏えいにつながります。
USBメモリからの感染例もあるのでできればUSBを使わない運用、暗号化USBを利用、持ち出しルールを決めることをおすすめします。
6. フリーWi-Fiでは業務をしない
カフェやホテルの無料Wi-Fiは便利ですが、通信内容を盗み見られるリスクがあります。
依頼者情報を扱う作業は、事務所、自宅、VPN接続など、安全な通信環境で行いましょう。
7. 退職者・スタッフのアカウントを放置しない
意外と多いのが「退職した職員のメールアドレスがそのまま」というケースです。
不要になったアカウントはすぐ削除しましょう。
権限管理も定期的に見直すことが重要です。
8. セキュリティは”人”が最後の砦
どれだけ高性能なシステムを導入しても、最後は人の判断です。
「怪しいメールを開かない」
「パスワードを共有しない」
「離席時は画面ロック」
「書類を机に放置しない」
こうした日常の習慣が情報漏えいを防ぎます。日本司法書士会連合会も、情報資産を守るために「人的・物理的・技術的」な対策を組み合わせることを基本方針として示しています。
まとめ
セキュリティ対策は信頼そのもの
司法書士が取り扱う情報は、お客様の人生や財産、会社経営に深く関わるものです。万が一情報漏えいが起これば、損害だけでなく、これまで築いてきた信頼を失う可能性もあります。
セキュリティ対策は「コスト」ではなく、「依頼者との信頼関係を守るための投資」です。日頃から基本的な対策を積み重ね、安心して相談していただける事務所づくりを心がけましょう。
司法書士事務所で優先したいセキュリティ対策は次の8つです。
・OS、ソフトウェアを常に最新に保つ
・パスワードを使い回さず、多要素認証を利用する
・不審なメールや添付ファイルを開かない
・バックアップを取得し、復元できることを確認する
・USBメモリの利用ルールを整備する
・安全なネットワーク環境で業務を行う
・不要なアカウントやアクセス権限を削除する
・スタッフ全員がセキュリティ意識を持つ
これらは特別な知識や高価な設備がなくても始められる対策です。日々の小さな積み重ねが、依頼者の大切な情報と事務所の信頼を守ることにつながります。
