司法書士を開業するのにはいくら必要?どうやって準備すればいい?将来の開業のためにするべきことは?
この記事では、そんな司法書士を開業するうえでの融資や資金調達と準備作業について解説します。
1 開業費用はいくら必要か?
特別な機材を必要としない司法書士は、他業種と比較して安く開業することができます。しかし、開業後に事務所が軌道に乗るまでの生活費は必要です。事務所を開設するための費用と生活費を合わせて300万円~500万円ほど用意しておけばよいでしょう。
1 事務所費用
自宅を改修しないで事務所にすれば事務所費用はいりません。事務所を借りる場合、補償金その他で家賃の8倍程度の初期費用が必要です。レンタルオフィスやSOHOマンションを活用すると事務所費用を抑えることができます。
2 準備するもの
事務所の什器として机、イス、来客用のテーブルとチェア、書棚、レンジ、傘立てなど、事務機器として電話などの通信機器、パソコン関連機器など、ほかに文房具、業務用などが必要です。
3 運転資金
事務所経営が軌道に乗るまでの生活資金の半年分と仕掛の仕事が入金されるまでの資金を用意します。
2 開業費用はどのように準備したらよいか
おおよその開業費用を見積もることができたら次は準備です。資金を準備する方法と注意点について解説します。
1 自己資金か融資を受けるか
開業費用を調達する方法は大きく自己資金と融資にわかれます。それぞれのメリット、デメリット、融資を受けるときのおすすめの方法を紹介します。
自己資金のメリット、デメリット
司法書士事務所を開業する費用はそれほど多額ではありません。自己資金による開業も十分に考えられます。借金をしないので安心感がありますが、資金制約に直面しやすい問題もあります。
融資のメリット、デメリット
融資を受けることで手元の資金を厚くすることができます。思わぬ物入りがあったときなど手元資金を機動的に使えると重宝します。融資である以上一定の金利の返済が必要です。
2 融資を受けるなら日本政策金融公庫の新創業融資制度がおすすめ
事業資金は通常銀行から借り受けることになります。起業のためには公的な融資制度が用意されています。各自治体が設置する融資制度と全国的な融資制度があります。
日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?
日本政策金融公庫の新創業融資制度は全国規模の公的起業融資制度です。無担保無保証で融資を受けられることと金利が低く抑えられていることがメリットです。
審査のポイント
融資を受けるためには審査にパスしなければなりません。審査の際創業計画書の内容が精査されます。担当者を納得させる計画書が必要です。
創業計画書のポイント
創業計画書は「確かにうまくいきそうだ」と思わせる計画書を作成しましょう。経営理念やビジネスモデルを定めたうえで妥当な数字が入った実行可能な計画書を作成します。
融資実行までの実際の流れ
Webサイトから用紙をダウンロードして郵送で申請することもできますが、支店窓口に出向いて相談したほうがよいでしょう。書類の提出後、30分~1時間の面談を経て融資金額が決まります。面談では創業計画書が念入りにチェックされます。質問に答えられるように準備しましょう。
3 独立開業までに考えておくこと
準備を始めてから開業するまでは忙しい作業の連続です。資格を取ってから開業準備に入るまでの修業期間中に開業後の事務所のイメージを固めましょう。
1 将来像を描く
どのような司法書士事務所にしたいのか、将来像を思い描きます。事務所を開く場所、専門分野、おもな顧客のイメージを描くことは、開業前の事業計画の作成や、開業後の経営判断の指針となります。
2 経営理念・事業理念を考える
経営理念・事業理念とは司法書士事務所の活動の基盤となる考え方、価値観、思い、存在意義を記したものです。経営理念・事業理念は、通常社会に対して事業を通じてどのような貢献を行いたいかを記します。経営理念・事業理念により、顧客と従業員は経営者の事業姿勢を理解することができます。
3 独立開業後のビジョン・イメージを描く
経営理念・事業理念は通常抽象的なものです。そこから独立開業後の日々の経営を具体的にイメージしましょう。具体的なイメージが決まれば、調達するべき物品を購入する、営業を始めるなど、次にやるべき作業を考えることができるようになります。
4 開業の具体的な準備
開業の具体的な準備とは経営を始める準備です。資金や事務所を調達しただけでは事業を始められません。経営者としてのスキルを磨き、事業全体を計画・実行します。
1 できるだけ経験を積む
事務所経営はさまざまなスキルを活用する総合的な活動です。多くの経験を積んで経営者としての対応力を高めましょう。事務所経営を続けるためには顧客が必要であり、顧客はネットワークの中で生まれます。同業司法書士、税理士、不動産業者、顧客との間にネットワークを作りましょう。
2 開業までのスケジュールを立てる
開業が具体的な段階に入ったら最初にスケジュールを立てます。スケジュールを立てると、いままで漠然としていた開業のイメージが明確になり、何をするべきかが具体的に見えてきます。
3 事業計画・開業資金計画を立てる
事業計画・開業資金計画は、融資を受ける場合は必須です。自己資金で開業する場合でも必ず計画を立てましょう。計画には日付と根拠のある数字が必要です。具体的な計画の作成は事業に成功する可能性を高めます。
4 PR方法を考える
開業後、多くの人々に事務所の存在を知ってもらわなければなりません。事務所にはどのような特徴・強みがあるのか、それを誰にどのような方法で訴えるのかを考えます。このような営業活動は開業後にも継続して行う必要があります。ホームページを開設する際には大切なコンテンツ要素となります。
5 事務所探し
自宅を事務所にしない場合、事務所探しが必要です。マンションの一室やレンタルオフィスなどが考えられます。顧客の利便性は重要ですが、一等地を選ぶと開業資金がかさみます。
6 司法書士ソフトの比較検討
司法書士ソフトは、業務の迅速化・正確化に役立ちます。司法書士の仕事では正確さが重要で、経営を考えればスピードも必要です。ソフトは、コストはもちろんですが、機能・使いやすさ・サポートのバランスを考えましょう。
7 独立した先輩の話を聞く
独立した先輩の話を聞くことで、ネットワークを強化するとともに開業上のポイントを押さえることができます。インターネット上の事例なども参考になります。
→ 独立を決意した司法書士の開業ストーリーやシステム導入エピソードはこちらから
5 開業後の手続き
続いて、開業前後の手続きを確認します。
1 司法書士会への届出
司法書士として仕事を開始するためには司法書士会への登録が必要です。書類を作成するために士業用の職印と認印が必要です。地域を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域内に設定された司法書士会を通じて登録申請書を提出します。
2 開業届・銀行口座開設
所轄の税務署に開業届を提出します。個人事業主は所得税を自分で計算し、年に一度税務署に申告します。これが確定申告です。取引を始めるために事務所の銀行口座を開設します。法人名義のクレジットカード、もしくは事業用の個人クレジットカードもあると便利です。選ぶ際には、ポイントが多いカードがオススメです。
6 まとめ
以上、司法書士の開業準備と融資について解説しました。融資を受ける、受けないより、実行可能な事業計画を作成するほうがはるかに重要です。事業計画を作ってみて資金の必要性を認識したら躊躇なく融資を活用しましょう。