1 司法書士の請求業務
ビジネス上の支払は請求書に基づいて行われます。司法書士事務所を営んでいる以上、請求と、それにまつわる処理は、欠かすことのできない業務です。請求処理業務とは、請求書を発行することと、請求書に対して入金が行われたかなどをチェックして、必要に応じて次のアクションのつなげる業務です。請求書とはどのような書類なのか、司法書士の請求業務とはどのようなものなのかを解説します。
1 請求書とは
請求書とは、商品やサービスを提供したときに、その対価を請求するために作成する文書です。請求書は、お金を受け取るための書類なので、どういう取引に対していくらの対価を支払う必要があるか、どういう方法でいつまでに支払う必要があるかを明示する必要があります。 請求書を送っただけでは、お金を支払わない相手に催促して、債権の時効を中断させることはできません。債権の時効を中断させるためには、催促が債務者に届いていることが必要なので、配達証明付きの内容証明郵便を送るなど、確実な手段をとる必要があります。 ・請求書に記載するべき事項 請求書の書式については、法律上の規定はありません。取引を円滑に進めるために、請求書には、以下の項目を明示することが望まれます。 ・請求先宛名などの情報 ・請求書発行日 ・請求書番号 ・請求者名などの情報 ・請求者捺印 ・合計請求金額 ・取引が行われた日付 ・明細情報、小計、税 ・振込先情報、振込手数料 ・支払期限 これらの項目を1枚の書面の中でわかりやすく明示した書類を送れば、請求したことになります。2 司法書士の請求業務
司法書士にとっても請求は重要な業務の1つです。登記の仕事は単発で請け負うことが多いので、仕事をしても未払いになるリスクがあります。そのため、未払いのリスクを防ぐために、仕事に取り掛かる前に入金してもらったり、着手金をいただいたりすることがよくあります。そのような場合、最初に見積書を発行して、顧客が合意した後で請求書を発行し、入金後に業務を実行します。2 Excel、専用ソフト、クラウド、システム、それぞれのメリット・デメリット
司法書士の請求書がどのように作られるのかを考えてみましょう。請求書に記載するべき情報で、請求書ごとに変わる情報は、顧客の情報、個々の業務と単価の情報、日付などの情報に分けて考えることができます。顧客の情報と個々の業務と単価の情報を、それぞれ別のデータテーブルにまとめておけば、それらの情報を呼び出すだけで請求書を作成できます。これらの情報を、請求書を作成するたびに手で入力すれば、ミスが増え、時間がかかり、ほかの業務との整合性を取りにくくなります。
司法書士が効率的に正確な請求書を作成するためには、以下の準備が必要です。
・顧客情報を独立したデータとして保持する
・個別の業務と単価などの情報を独立したデータとして保持する
・請求書を作成するときに顧客情報と業務情報を呼び出す
・計算を自動化する
・日付や請求書番号などの付与を自動化する
これらの情報を見栄えよく組み合わせれば、請求書を作成することができます。入金管理など、ほかの業務で使用するためには、請求書自体をデータとして保存しておく必要があります。
請求書の作成方法には、Excel、専用ソフト、クラウド、システムを使う方法があります。どれを使うべきかを判断するときには、請求書の見栄えだけではなく、上記の合理性がどこまで実現されているのかを見る必要があります。
1 Excelで作成する
Excelで作成する方法は、設備投資の観点から見て、もっともお金がかからない方法と言えるでしょう。しかし、長期的にみてこれがもっとも安上がりであるとは言えません。請求書の書式として、見栄えの良いものを作るとなれば、かなり時間をかけることになります。しかし、書式の点では、インターネット上のテンプレートを使うことができます。Excelについて、テーブルを使いこなすスキルがなければ、データの連携ができないので、何度も同じ入力を繰り返すことになります。その場合、顧客ごとの損益をまとめる、得意先元帳も個別に作成することになります。この方法は、請求書の用紙を買って個別に請求書を作っているのとあまり変わりがなく、効率性と正確さの面で大きな問題があります。Excelをデータベースとして使いこなすスキルがあれば、データが小規模である限り、Excelでも効率的に請求書を作ることは可能です。しかし、データが増大するにつれて、Excelでは間に合わなくなります。結局のところExcelは、データベースとして作成されたアプリケーションではありません。2 専用ソフトを使う
司法書士用の請求処理ソフトとして、いくつかのソフトウェアが出ています。これらのソフトウェアは、多くの場合、顧客データや業務データを備えているので、請求業務を効率化するための基本的な機能を備えていると言えます。専用ソフトを使うと、請求書の作成だけではなく、見積書などの関連する書類を作成し、入金を管理することもできます。実際に使ってみて使いやすさに問題がなく、書式も気に入るのであれば、請求処理を専用ソフトに任せることも考えてよいでしょう。しかし、専用ソフトは、個人が開発している場合もあり、保守体制やサポート体制が貧弱なことが多いです。専用ソフトはサポートに助けてもらいながら使うものではありません。3 クラウドを使う
専用ソフトがパソコンにインストールして使うものであるのに対して、クラウドのアプリケーションは、ウェブブラウザなどを通じてクラウド上の処理ソフトを使うものです。クラウドのアプリケーションは、多くの場合サブスクリプション制(月額課金制)です。クラウドのアプリケーションは、インストールして使うソフトと比較して品質が高く、保守やサポートも充実している傾向があります。 クラウドの請求処理アプリケーションにも顧客データベース機能や商品データベース機能があります。クラウドの請求処理アプリケーションを使う場合、請求書を郵送したり、メールで送信したりする機能が付加されていることが多いです。クラウドの請求処理アプリケーションは、司法書士の業務に特化してはいないので、商品データベースを業務データベースとして読み替えるなど、自分でカスタマイズして使う必要があります。4 司法書士業務システムを使う
司法書士業務書士システムは、司法書士の業務全体をできるだけ合理的に行えるように設計されています。司法書士業務システムは、主要業務をシステム化することを目的としていますが、多くの場合、請求処理機能も提供されています。司法書士業務システムは、完全に合理的に設計されているので、二重に入力したりする手間は、ほとんどありません。司法書士業務システムを使えば、登記などの業務で入力した情報から、ほとんど自動的に請求書を作成し、入金などを管理することができます。3 実際司法書士は何を使っているのか?
主要な製品情報を簡単にご紹介します。製品にはそれぞれ特徴があるので、導入を判断するためには、しばらくの間実際に使ってみるのが一番です。
