司法書士も開業すれば「個人事業主」の仲間入りです。個人事業主である以上、営業なしで済ませるわけにはいきません。開業司法書士が営業を成功させる方法について解説します。
1 そもそも開業司法書士は儲かる?
開業はリスクをともなう大きな決断です。司法書士の開業にはリスクに見合うだけのリターンがあるのでしょうか。
1 勤務司法書士の平均年収は?
多くの場合、司法書士は資格を取得したあと、司法書士事務所に所属して実務能力を磨きます。資格取得後2年以内の開業、3~5年の開業はそれぞれ3割程度のようです。勤務司法書士の初任給は、年収に直すと240万~360万円です。勤務司法書士には年功的な昇給システムはありません。
2 開業司法書士の平均年収は?
開業司法書士の平均年収をまとめた統計は存在しませんが、おおよそ600万円とみられています。事務所を経営していると多くの支出を経費で落とせるため、実質的な収入はこの金額より大きくなると考えて良いでしょう。
3 年収1000万や2000万は実現可能なのか?
「司法書士白書 2015年版」によれば、男性司法書士のうち約17%、女性司法書士のうち約11%が年収1000万円以上であるという調査結果が出ています。同じ調査によると、開店休業状態の司法書士が含まれているとはいえ、開業司法書士の収入には大きなバラツキがあると言えます。
2 なぜ営業力が必要なのか?
1 事務所の仕事量や質を決める
まず、同業の司法書士との競争があります。司法書士登録者数は増加の傾向にあり、司法書士間の競争はそれだけ激しくなっています。そうした中で、仕事の質と量を確保するためには営業努力を欠かすことはできません。
2 事務所の立地による限界を超えるために
Webを活用し、ホームページやブログで案件の事例や相談できる内容をきちんと発信することで、より広い地域から仕事が舞い込んでくるようになります。インターネットの活用はIT化の進んだ現代において有力な営業手段です。
3 開業司法書士の顧客獲得方法まとめ
開業司法書士の営業手段、顧客獲得手段にはたくさんの種類があります。実際に試していきながら、ご自身の事務所にとって効果の高い方法を見つけましょう。
1 飛び込み営業
訪問先にアポイントをとらずに訪問して行う営業を「飛び込み営業」と呼びます。司法書士事務所を開設したら、近隣や関係各所にあいさつ回りをするでしょう。このとき同時に飛び込み営業を行うことをおすすめします。
主な営業先
司法書士の営業先としては、個人顧客、町の不動産関連業者、信託銀行、その他住宅ローン取り扱い金融機関などが考えられます。他の士業事務所も仕事を融通しあう点で重要な営業先です。
営業先を絞りすぎるとこんなリスクもあります
専門性を追求して狭い分野で地域の第一人者になることを目指す戦略は悪いものではありません。しかし、その結果営業先を絞り込みすぎると仕事がなくなったり受注するときの立場が弱くなったりするので注意が必要です。
2 銀行や不動産会社、人からの紹介
銀行や不動産会社に対する営業に成功すれば、登記をはじめとした定常的に発生する仕事を長期的に獲得することができます。人からの紹介、とくに既存顧客からの紹介は、最も重視するべき顧客獲得手段です。
3 地域主催の相談会や法律関連のイベントへ参加する
各地域で法律相談会や法律関連のイベントが開かれています。相談会やイベントに出席すれば、自分の事務所を多くの人々に知ってもらうことができます。その場で顧客を獲得できることもあるでしょう。
4 異業種交流会やセミナーに参加する
異業種交流会やセミナーに参加すれば、他の士業事務所や新しい顧客に出会うことができます。セミナーの講師や相談役を務めることは、参加者全員に営業をかける機会ですから、積極的にイベントを開催、運営することも有効です。
5 個別相談のハードルを下げる
気軽な個別相談が仕事につながることも少なくありません。仕事を増やしたいときには個別相談の金銭的、心理的ハードルを下げましょう。相談件数の増加に伴って仕事も増加するはずです。
6 テレアポやDMを送付する
テレアポとは、見込みのありそうな顧客に順番に電話をかけて商談のアポイントをとる営業手法です。タウンページなどを活用して見込み客のリストを作り順に電話するのが一般的な方法です。リストに対してダイレクトメールを送付することも有力な営業手段です。テレアポやDMを使えばインターネットをあまり使わない世代にも認知を広げることができます。
7 HPやSNSを活用する
インターネットが発達した現代では、HPやブログ、SNSは有力な営業手段です。ブログやSNSをこまめに更新することで、問い合わせの増加、事務所のブランディングを図ることができます。
SEO対策も必須
また、SEO(検索エンジン最適化、Search Engine Optimization)対策はインターネットからの集客を行う上で必須事項です。SEO対策を施してターゲット顧客がなんらかのワードで検索したときに自分の事務所が上位に表示されるようにします。
ウェブ広告も検討してみる
もし競争相手が多い駅周りや地域の場合は、検索広告も検討してみてもいいかもしれません。「●●駅 相続 司法書士」など、相談者が検索するときに入力するキーワードを予想して、広告を作成します。土日に相談できる、遠方の相談もできるなど、事務所の特長を表示広告に盛り込みます。
8 営業の効果が出る速さは?
営業手段により、効果が出るまでにかかる時間が異なります。ブログの更新による集客は結果が出るまでに時間がかかりますが効果は蓄積されていきます。テレアポやDMは電話件数やDM送付数に応じてすぐに結果が出ますが効果は持続しません。
4 営業を成功させるために必要なこと
営業の目的は新規顧客を獲得することです。ここまで紹介した営業をすべて実施する必要はなく、自分に向いた営業、実施して効果があった営業を継続すれば良いのです。
1 伝達力やアピール力を磨く
自分が司法書士として何ができるのか、何を得意としているのかをわかりやすく伝達する必要があります。伝達力やアピール力を磨く努力を怠ってはなりません。そして、相手の求めていることを聞く傾聴力も重要です。相手の話をよく聞くことができて初めて相手に必要な情報を伝えることができます。
2 自分の向き不向きを把握しておく
誰にでも向き不向きがあります。トーク力がなければ、交流会に出席してもなかなか知り合いができない可能性があります。不向きな営業はやめてしまい、成果が上がる営業に注力するのも一つの手です。
3 事務所のブランディング、ポジショニングをしっかり決めておく
司法書士事務所といっても得意分野や営業方針はさまざまです。事務所のブランディング、ポジショニングがはっきりしていなければ何を訴求するべきなのか分かりません。ブランディングやポジショニングを経営方針の中で明確化しましょう。
5 開業するための準備についてまとめ
最後に開業準備の方法について解説していきます。
1 資金を用意する
特別な機材・設備を必要としない司法書士は比較的簡単に開業できます。開業に必要な資金は、50万~150万円程度と言われています。自宅で開業すれば必要な金額が減り、物件を借りれば多くなります。これに経営が軌道に乗るまでの生活資金150万円程度を加えた額を用意すれば良いのです。資金調達方法としては自己資金または融資があります。
2 開業の準備をする
開業準備の中でもっとも重要なのは事業計画です。マーケットを調査して、経営方針を決定し、ブランディング、ポジショニングを明確にしてから具体的な事業計画を立てます。開業スケジュールを立てたらあとは根気よく順番に実行していきましょう。
3 開業後の手続きにも注意する
開業後の手続きを忘れないようにしましょう。司法書士として仕事をするためには、日本司法書士会連合会への登録が必要です。税務署に開業届けを提出する必要もあります。
6 まとめ
以上、司法書士が営業を成功させる方法をご紹介しました。営業は必要です。しかしここで紹介した方法をすべて実施する必要はありません。自分に適した営業方法を実践して新規顧客を獲得してくださいね。