フリーランスというと、Webデザイナー、プログラマー、ライターなど、ウェブやITに関わる仕事や、イラストレーター、デザイナー、作家、アーティストなど、クリエイティブな仕事を思い浮かべる人が多いでしょう。独立している司法書士やその他の士業は、会社や組織に属していないので、フリーランスな働き方の一つと考えることができます。フリーランスとしての司法書士の特徴、フリーランスの司法書士になる道のりをご紹介します。
1 フリーランスとは
独立した司法書士はフリーランスな職業の1つです。フリーランスとしての司法書士の特徴や、なり方をご紹介する前に、そもそもフリーランスとはどのような働き方なのかを確認しておきましょう。
1 フリーランスの定義
特定の企業や組織に属さずに、自らの技能を提供することで働く人々を「フリーランス」と呼びます。フリーランスは「自由業」と呼ばれることもあります。フリーランスは通常単発で仕事を請け負います。フリーランスには企業のような所属先がありません。フリーランスが税務署に開業届を提出すると「個人事業主」と呼ばれます。
2 フリーランスのメリットとデメリット
フリーランスのメリットとデメリットをご紹介します。
フリーランスのメリット
会社員と同じ仕事をする場合、フリーランスの方が収入は大きくなる傾向があります。会社員は雇用契約で定まった給料を受け取りますが、フリーランスが受け取るのは売上そのものです。働き方の自由度が高いことも、フリーランスの大きなメリットです。フリーランスの場合、売上を上げている限りなんの制限もありません。フリーランスは働き手として鍛えられ、実力がアップします。好きな仕事を選んで集中できることや、さまざまな立場の人々と共同して仕事をすることで、スキルの面でも、経営能力の面でも実力が上がります。
フリーランスのデメリット
フリーランスの最大のデメリットは、収入が安定しにくくなることです。会社員は、雇用契約や労働契約の仕組みに守られています。会社員には、契約を守って働いている限り、売上の如何に関わらず毎月一定額の収入が得られます。フリーランスを支えるのは自分で稼いだ売上だけです。フリーランスは多くのことを自分で決めて実行しなければなりません。事業管理、スケジュール管理、体調管理、将来に向けての資産形成。フリーランスはこうした事柄にエネルギーを割く必要があります。
インボイス対応について
インボイス制度の開始により、基準期間や特定間の課税売上高等が1,000万円を超えない場合は免税事業者として活動してきたフリーランスも課税事業者になることを検討するかもしれません。例えば取引先に課税事業者が多い場合などです。適格請求書発行事業者への登録は任意です。ここはよく検討しましょう。またどのタイミングでなるかで課税開始日が異なるので、注意が必要です。
3 フリーランスになる方法
一般的に、フリーランスは自分のスキルを提供してお金を稼ぐビジネスです。なんのスキルもない人がフリーランスになるのは難しいでしょう。その点、司法書士は誰でも取れる資格ではないので、フリーランスに必要な仕事のスキルを身に付けたと言えます。問題はスキルがあるだけではフリーランスにはなれないということです。フリーランスは、個人事業主として、自ら仕事を受注しなければなりません。フリーランスが仕事を受注する主な方法は、
・クラウドソーシングサイトから案件を受注する
・友人などの人脈から受注する
・営業活動する
・ウェブ上で情報を発信することで受注に結びつける
です。フリーランスの司法書士は、これらの手段を使って、自分で仕事を受注する必要があります。
2 フリーランスとしての司法書士の特徴
フリーランス全体の中で、司法書士は「専門・士業系」のフリーランスに分類されます。「専門・士業系」のフリーランスは「ビジネス系」「IT・エンジニア系」のフリーランスとともに年収が高い部類に属します。これらの分類に属するフリーランスには、取引先が法人である点が共通しています。
1 フリーランス司法書士の職務内容
司法書士の主な職務は、
・不動産登記
・法人登記
・成年後見
・相続・遺言
・債務整理
・裁判に関する業務
です。住宅の売買に関連する不動産登記と、会社の設立などに関連する法人登記は、今日でも多くの司法書士事務所の主力業務です。登記の仕事は以前に比べて減っているので、成年後見や相続・遺言に力を入れる司法書士事務所が増えてきました。認定司法書士の資格を取ると、司法書士は簡易裁判所で少額の民事訴訟の代理人として業務を行うことができます。
フリーランスの司法書士は、経営者として、これらの業務を受注・遂行・経営管理することになります。
2 フリーランス司法書士の収入
司法書士はフリーランスの分類の中では「専門・士業系」に属します。「専門・士業系」のフリーランスの約3割が年収800万円以上です。士業のフリーランスは才覚があれば十分な年収を稼ぐことができます。しかし、「専門・士業系」のフリーランスの2割弱は年収200万円未満であり、約3割は年収400万円未満です。士業のフリーランスの年収を決定するのは、スキルの要素以上に、営業力の要素が大きくなります。資格は一定のスキルがあることを証明するものですが、営業力についてはなんの情報も与えません。フリーランスの司法書士に限った平均年収は、600万円程度であると見られています。
3 司法書士はフリーランスになりやすい資格
司法書士はフリーランスになるうえで有利な資格です。司法書士の人数の増加、主力業務である不動産登記の件数が減ったこと、都市部を中心として、司法書士が会社員として働く司法書士法人が台頭してきていることなど、司法書士の独立を取り巻く環境は厳しくなっているものの、今日でも司法書士の有資格者の多くは、資格取得後数年で独立しています。司法書士の独立しやすさの背景には、資格の希少性とともに、開業費用があまりかからないこともあります。
3 フリーランスの司法書士になるには
フリーランスには多くのメリットがあり、司法書士として開業することは、収入の面からみても、独立しやすさの面からみても、フリーランスになる有力な方法です。それではどうすればフリーランスの司法書士になれるのでしょうか?フリーランスの司法書士になるためには、資格を取得して開業する必要があります。フリーランスの司法書士が成功する秘訣は人脈作りです。
1 司法書士試験に合格する方法
一般の学生や会社員が司法書士の資格を得るためには、司法書士試験に合格する必要があります。法律知識ゼロから始めて司法書士試験に合格するために必要な勉強時間の目安は3000時間です。この時間は受験に専念したとしても1年ではかなり困難であり、仕事がある人には無理でしょう。多くの人は数年かけて合格しています。要領よく勉強することで、勉強時間を短縮できます。ネットスクールなどを利用したほうが無駄なく勉強できるでしょう。知識のない会社員が司法書士の資格を目指すのであれば、なんとかして勉強時間を確保することと、ネットスクールなどを活用して効率よく勉強する必要があります。
2 司法書士事務所を開業する道筋
試験に合格してから開業するまでの道筋をご紹介します。試験合格後、すぐに開業することもできますが、実務能力に磨きをかけるとともに、人脈を作るためにも、準備期間として数年間司法書士事務所に勤務するのがよいでしょう。その間、どのような事務所にしたいのか、どこで開業するのか、どうやって売上を立てるのかなどについて考えます。そうした準備ができたら、いよいよ開業です。事業計画や資金計画を立てて計画的に開業します。融資を受ける場合は日本政策金融公庫の新創業融資などを検討します。
3 フリーランス司法書士として成功する秘訣
フリーランスの司法書士として成功するための秘訣は人脈にあります。フリーランス全体に対するアンケートでは、成功するために重要なことは、セルフブランディング、専門性・能力・経験、やり遂げる力、人脈の順になっています。司法書士にとって人脈が重要となる理由は、司法書士は仕事をどのように確保するのかを考えれば分かります。司法書士の主な仕事は不動産登記や商業登記です。これらの仕事をエンドユーザーが直接司法書士に依頼することは少なく、家屋の売買や、会社設立の依頼を受けた不動産業者や税理士などから紹介で依頼される場合が多いです。司法書士は、関連業者や士業との人脈を作ることで、紹介から仕事を得ることができます。
4 まとめ
現代は知識社会であり、能力やスキルの高い個人がフリーランスになって世の中に貢献することは時代の要請でもあります。司法書士は、フリーランスになる方法としては、収入の面でも、独立のしやすさの面でも、有利な資格です。フリーランスは個人事業者なので、独立するためには、司法書士としての業務能力に加えて営業能力も求められます。司法書士の営業では人脈形成がもっとも重要です。