司法書士が成功するためには、何よりも営業が重要だと言われます。しかし、なぜ営業が重要なのでしょうか?また、司法書士が営業で成果を上げるためには、なにをすればよいのでしょうか?ここでもう一度、営業とはなにか、なぜ営業しなければならないのかを確認しましょう。また、司法書士が営業で成果を出す方法をご紹介します。
司法書士の営業は、いわゆる「お願い営業」になってしまいがちです。受注発注の流れの中で、司法書士の位置は川下になりがちなので、仕方がないと思っている司法書士も多いことでしょう。司法書士が川上に立つことができたら、営業活動もより有利になります。司法書士の川上営業についてご紹介します。
1 司法書士にとって営業が重要である理由
はじめに、そもそも営業活動とはどのような活動なのかを確認します。独立した司法書士は、事務所の経営者として、実務と経営の両方の活動に携わります。しかし、営業して仕事を受注できなければ、実務も経営もありえません。
1 営業とはなにか
営業とは、受注するための活動です。しかし、どうすれば受注できるのでしょうか?受注するための第1の条件は、発注してくれる可能性がある人々に、自分の存在を知ってもらうことです。提供するサービスや商品によって、発注してくれる可能性がある人々は異なります。最初に、発注してくれる可能性がある人々がどこにいるのか、どうしたらアクセスできるのかをよく見極めなければなりません。
発注してくれる人々に自分の存在を知ってもらえば、すぐに受注できるのでしょうか?そうではありません。なぜなら、発注者は、別の誰かに発注することもできるからです。受注するためには競争に勝たなければなりません。競争に勝つためには2つのことが必要です。1つは相手に信頼されること、もう1つは相手にメリットがあることです。相手にメリットがある提案をできたとしても、信頼してもらえなければ受注できないでしょう。
営業とは、発注する可能性がある相手を探し、相手の信頼を勝ち取り、相手にメリットを与える活動です。
2 営業が重要である理由
開業した司法書士は、大きく分けて3つの活動を行います。1つは司法書士としての業務です。司法書士の業務をこなす能力については、司法書士試験に向けての勉強や、その後の研修、司法書士事務所での勤務などを通じて、一定レベルが確保されていると考えられます。残りの2つの活動は、帳簿をつけたり、請求や入金を管理したり、備品や消耗品を管理したり、経営計画を立てたりといった、経営活動と、営業活動です。飲食店などであれば、立地の良い場所に設備の良い店を構え、料理の質が高ければ、自然に客がついていきます。しかし、司法書士事務所を構えただけで、顧客がつくことは、まずありません。とくに開業当初は、積極的に営業活動を行い なんとかして受注しなければ、司法書士としての業務もできなければ、経営活動を行うこともできません。
2 司法書士の営業方法
司法書士にとって、営業は重要な活動です。司法書士はどのような営業活動を行えば、仕事を受注できるのでしょうか?司法書士の営業は、一般的な営業とは、かなり違います。司法書士はさまざまな業務を行います。司法書士は、それぞれの業務に即した営業を行う必要があります。
1 司法書士の業務
司法書士の業務が社会においてどのような役割を担うのかがわかれば、業務に適した営業活動が見えてきます。そこでまず、司法書士の主な業務を確認しましょう。
司法書士の本来業務には、以下のようなものがあります。
・土地や建物の登記に関する業務
・会社などの登記に関する業務
・簡易裁判所での代理(認定司法書士のみ)
これらの業務は資格者以外実施できない独占業務です。
司法書士はほかに付帯業務として、以下の業務も行います。
・成年後見に関する業務
・相続・遺言に関する業務
・債務整理に関する業務
司法書士がこれらの業務を行う根拠は、司法書士法などに求められます。付帯業務は資格を必要としないので、競争が厳しい面があります。しかし、司法書士法などのバックアップがあるので、司法書士は信頼を獲得しやすく、有利な立場にあります。司法書士のそれぞれの業務には、単に書類を作成したり代理で申請したりするだけではなく、相談に応じることも含まれます。司法書士の業務は、伝統的に不動産登記と法人登記でしたが、登記案件の減少や、自分で登記を行う人が増えたことを受けて、付帯業務に力を入れる司法書士が増えています。
2 営業先別にちがう営業が必要
営業とは、発注しそうな人を探し、彼らの信頼を獲得し、彼らにメリットを与える活動です。司法書士は、それぞれの業務ごとに、これら3つの活動を行う必要があります。
登記案件の特殊性は、登記を必要とする人が直接司法書士に仕事を依頼することが少ないことです。不動産登記は、住宅購入やローンの組み換えに関連して必要となるものです。不動産業者や金融業者は、顧客が不動産登記をするために、司法書士を紹介します。同様に、会社の税務の依頼を受けた税理士が、法人登記の仕事のために、顧客に司法書士を紹介することがあります。付帯業務は司法書士に直接依頼が来ることもあれば、関連士業から仕事が来ることもあります。
不動産登記の営業先は不動産業者や銀行であり、業者の数が少ないので、訪問営業で丁寧に説明するのが適切です。関連士業の人脈は常に重要なので、士業関係の集まりにはまめに出席する必要があります。一般顧客は数が多いので、セミナー開催や、ネット集客が有効です。セミナーの受講者のうち何人かは、将来自分の顧客になると期待できます。
3 司法書士の川上営業
司法書士の川上営業とは、本来の顧客から受注しようとする営業活動です。司法書士が川上営業するためには、本来の顧客のニーズをよく理解して、かれらにアピールする必要があります。
1 川上営業とは
川上営業とはできるだけ源泉にさかのぼって仕事を獲得しようとする営業活動です。仕事の流れを川の流れのように考えることができます。はじめに本来の顧客ニーズがあります。本来の顧客から受注した事業者は、自分でその仕事を実行したり、ほかの事業者にその仕事を発注したりする主導権を握ります。本来の顧客から受注した事業者と、その事業者から受注する事業者は、川上と川下の関係にあります。川下の事業者は、川上の事業者に依存することになれば、価格決定などの面で不利になります。川上営業とは、できるだけ川上のニーズを発掘して受注しようとする営業活動です。川上で仕事を受注できれば、むしろ「お願い」される立場になるので、経営上非常に有利です。
2 司法書士が川上営業するには
司法書士が川上で営業するためにはどうしたらよいのでしょうか?たとえば相続の依頼を受けた税理士が、相続登記のために司法書士を紹介すれば、司法書士は税理士の川下に立つことになります。逆に、相続の依頼を受けた司法書士が、相続税の申告のために税理士を紹介すれば、司法書士が税理士の川上に立つことになります。司法書士の川上営業とは、本来の顧客から受注することにほかなりません。
川上営業の顧客は、本来のニーズを抱えた一般顧客です。司法書士が川上営業するためには、一般顧客のニーズを十分に理解して、彼らのニーズを解決できることをアピールする必要があります。一般顧客は、相続や成年後見を適切に実行することを求めていますが、誰が、どのように行うのかには関心がありません。そうした事情を十分に理解して営業活動を行えば、ときには川上で受注できるようになります。川上営業をできるようになれば、士業や業界のネットワークの中で対等の立場を獲得できます。川上営業によって、「お願い営業」を脱し、より有利で健全な経営を行えるようになります。
4 まとめ
仕事をもらう活動とは、営業活動にほかなりません。司法書士の営業について、営業とはそもそもどのような活動なのかを確認したうえで、司法書士はどのような営業活動を行えば良いのかを解説しました。司法書士は、川下で仕事を受注することになりがちですが、川上で仕事を受注することができないわけではありません。司法書士が川上で仕事を受注できるようになれば、関連する業界の中で、対等の立場を獲得することができます。