司法書士試験は合格率3~4%の狭き門です。何年間もの苦しい試験勉強に耐えてようやく合格できる司法書士の資格は、収入の面でもさぞかし報われるのだろうと考える人も多いことでしょう。司法書士の年収はいくらほどになるのかをご紹介してから、開業して勝ち組に入るためのポイントをご紹介します。
1 平均年収は600万円
開業して事務所を経営している司法書士の平均年収はおおよそ600万円ほどと言われています。しかし、この数字はあくまで平均の数字であり、そこには大きな個人差があります。日本司法書士会連合会の調査によると、開業した男性司法書士の約6割が年収500万円未満であり、1/4の年収は200万円未満です。また、開業した女性司法書士の場合、約7割が年収500万円未満であり、約4割の年収は200万円未満です。その一方で、開業した男性司法書士の2割近くが1,000万円以上の年収を稼いでおり、女性でも1割強が1,000万円以上稼いでいます。経営者になる以上収入に大きな開きが出るのは当然のことです。開業しても稼げないリスクを嫌って会社員として勤務する形で働く進路を選択する司法書士もいます。
2 開業司法書士と勤務司法書士
司法書士は働き方によって開業司法書士と勤務司法書士の2種類に分けられます。開業司法書士とは、自分で事務所を構えて、つまり独立して司法書士事務所を営む司法書士です。勤務司法書士とは、開業司法書士の事務所に雇われて働く司法書士や、司法書士法人の社員として働く司法書士です。開業司法書士の平均年収はおおよそ600万円ですが、勤務司法書士の平均年収はおおよそ400万円です。
開業司法書士は経営者なので、働き方や休みの取り方は自由に選ぶことができます。開業司法書士は、自分の好きなように仕事をすればよいのですが、経営を成り立たせるために、自分で仕事を獲得しなければなりません。開業司法書士は、営業する力や人脈を作る力が弱いと、廃業や低収入に追い込まれたり、仕事を回してくれる税理士や銀行、不動産業者の下働きの立場に追い込まれたりします。
勤務司法書士は、いわば会社員の司法書士です。多くの勤務司法書士は、開業前に経験を積むために、勤務司法書士として働きます。勤務司法書士の平均年収400万円ほどであり、開業司法書士の平均年収と比べてかなり劣りますが、生活が安定したり、会社員としての福利厚生があったりするメリットもあるので、開業せずに勤務司法書士を続ける司法書士もいます。
3 司法書士の年収あれこれ
司法書士の年収は、勤務形態だけではなく、年齢、地域によっても大きく異なります。そうした細かなデータについては、政府の統計のような確度の高い統計は手に入りません。そこで、入手できるいろいろなデータを総合することで、だいたいのイメージを描いてみることにします。司法書士の年収は年齢とともにどう変わるのか、地域ごとに差があるのか、年収を考えたときに会社員とどちらが有利なのかをご紹介します。
1 年齢と年収
司法書士の年収は年齢とともに上がるのでしょうか?そうではありません。
最初に開業司法書士について考えてみましょう。開業司法書士は、自分でこなした仕事が多ければ多いほど年収が上がります。開業司法書士の年収を決めるうえで、年齢は大きな要素とはならないのです。開業司法書士の年収の決定する力は、経営力、営業力、人脈力です。そうした力は開業司法書士として経験を重ねているうちに次第に高まっていきます。したがって、平均を取ってみると、20代のおおよそ500万円から、50代のおおよそ850万円まで、年齢とともに年収が上がっていくことになります。
次に勤務司法書士について考えてみましょう。通常の会社員と違って、勤務司法書士が働く司法書士法人などには、年齢で給与が上がる制度はありません。勤務司法書士の年収は、事務所内で経験を重ね、より高度な仕事を担当するようになることで上がっていきます。一般に年齢が高ければ経験も豊富と考えられるので、平均を取ってみれば、勤務司法書士の年収も、年齢とともに上がる傾向が見られます。勤務司法書士の平均年収は20代のおおよそ330万円から、50代のおおよそ650万円まで、年齢とともに上がっていきます。
2 地域と年収
司法書士の年収は、東京や大阪で高く、他の地域では低くなる傾向があります。東京や大阪は経済活動の中心地であり、司法書士にとっても高額案件があるからであると考えられます。また、大都市には大規模な司法書士法人が集中しています。大規模司法書士法人は、会社組織としてより高度な経営を行っているため、より高額の給与を支払える状況にあります。さらに、大都市では勤務司法書士の求人難が続いていることも、大都市とそれ以外の地域とで、司法書士の年収の格差をもたらしていると考えられます。だいたいの目安として、東京の司法書士の年収は900万円台弱であるのに対して、それ以外の地域では500万円台から600万円台となっています。
3 会社員とどっちが有利か?
それでは結局、司法書士と会社員とではどちらが有利なのでしょうか?
まず会社員と勤務司法書士を比較してみましょう。国税庁の、民間給与実態統計調査によると、給与所得者の平均年収は約500万円です。勤務司法書士の平均年収は約400万円なので、勤務司法書士になるのは会社員と比べて不利になるのではと思われるかもしれませんが、勤務司法書士の多くは数年後に独立するので、この数字に見られるような差があるわけではありません。それでも、司法書士になるためには数年間勉強する期間が必要であることや、勤務司法書士の収入はは初任給月額20万円程度から上がっていくことを考えると、年齢が高くなってから司法書士の資格を取り、開業しないで勤務司法書士を続けることは、収入の面からみると会社員より不利と言えそうです。しかし、東京などの大規模な司法書士法人で高待遇を獲得できれば、年収面で有利になることもあるでしょう。そもそも、世の中にはたくさんの職業があり、会社員の収入は職業や立場によって大きくちがいます。自分が会社員を続けたときと、司法書士になったときを比べてどちらが有利かを判断するためには、自分が属する会社や業界、自分の地位などを十分に考慮する必要があります。
次に会社員と開業司法書士を比較してみましょう。開業司法書士の平均年収はおおよそ600万円ほどなので、会社員の平均年収よりもずっと高いと言えます。事務所経営を軌道に乗せることが出来れば、年収は次第に上がっていくので、開業司法書士は会社員より有利と言えます。開業司法書士は経営手腕や人脈がものを言う世界です。そうした手腕に自信があるならば、会社員を脱サラして、数年の勤務司法書士の期間を経た後に、司法書士事務所を開業するのは、収入面からみても十分に合理的なキャリアパスになるでしょう。
4 開業司法書士の中で勝ち組になるためには
開業司法書士として成功するための秘訣は、人脈を強化することです。人脈を作るためには、人脈を仕事の種類に応じて3つのタイプに分けて、それぞれに対して適切な方法で取り組む必要があります。
1 人脈が重要
試験に合格する力と、開業して成功する力はまったくの別物です。試験に合格するためにはまじめにコツコツ勉強する力が必要で、いわば忍耐力と記憶力の世界です。それに対し、開業して成功するためには、新規顧客をいかに獲得できるかが勝敗の分かれ目となります。ここで登記の仕事を考えてみましょう。最終的な顧客は住宅を買ったり借りたりする一般の人々なのですが、そうした人々は、不動産業者や銀行に業務を依頼し、司法書士は業者から顧客を紹介されるのが一般的な流れです。司法書士は紹介から仕事を獲得することが多い職業です。開業司法書士として高額の年収を得たいのであれば、人脈を作る力を磨くよりありません。
2 人脈の作り方
それではどうすれば、人脈を作ることができるのでしょうか。司法書士の場合、人脈を3つに分けて考えるとわかりやすいでしょう。1つは金融業者や不動産業者であり、登記に関連する人脈です。1つは同業者や隣接士業であり、士業通しで顧客を紹介しあったり、互いに助け合ったりする仲間です。最後の1つは顧客の人脈であり、相続などの分野で直接集客し、紹介をつなげて顧客を獲得する人脈です。金融業者や不動産業者には訪問営業が適しています。士業は勉強会や異業種交流会にでるのがよいでしょう。一般顧客は地域のイベントに参加することでアプローチしていきましょう。
5 まとめ
司法書士試験の難しさに比べると、600万円という開業司法書士の年収は意外に少ないと思う人もいるかもしれません。しかし、収入面以外にも、自分で自分の働き方を選べる開業司法書士にはたくさんの魅力があります。経営者として仕事をとってくる自信がある人にとっては、開業司法書士は大きな魅力があるキャリアパスと言えるでしょう。
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