『司法書士を開業するときには「運転資金」も考慮しなければならない』
とよく言われます。この「運転資金」とはどのような資金なのでしょうか?この記事では、はじめに、開業するときの資金にまつわる言葉を整理します。次に、司法書士が開業するときの、各資金の内訳をご紹介します。最後に開業に必要な資金の調達方法をご紹介します。
1 運転資金とは何か―開業に必要な3つの資金
司法書士として独立開業するためにはさまざまな資金が必要です。必要な資金を細かく数え上げると、数が多すぎて全体像がわかりにくくなります。もろもろの資金を、開業資金、当面の運転資金と生活費の3種類に大きく分けて考えると、全体像が分かりやすくなります。
1 開業資金
開業資金とは、事務所を開業するために必要な資金です。開業資金を確保できれば、事務所を借りたり、備品をそろえたりすることができ、事務所としての陣容が整います。これでめでたく開業日を迎えられます。
2 当面の運転資金
司法書士事務所を開設したからといって、最初から十分な収入が得られるとは限りません。通常、開業してからしばらくの間は、売上があまり立たないので、収入よりも支出のほうが多くなります。「運転資金」とはそのような期間中、事務所を維持するための資金です。開業してから経営が黒字化するまでに、半年はかかると考える必要があります。「当面の運転資金を確保する」ことで、その期間中に事務所を維持することができます。
3 当面の生活費
事務所を開業して維持するための経費と、経営者やその家族が生活を維持するための費用は区別しなければなりません。開業資金と運転資金は、事務所の経営に必要な資金です。経営者とその家族は、それとは別に、生活するためのお金が必要です。「当面の生活費を確保する」ことで事務所の収入で生活をまかなえるようになるまでの生活が維持されます。
2 開業資金の内訳
開業資金の内訳を具体的に見ていきます。
1 事務所物件
事務所物件を借りるために必要な資金は、開業資金の中でもっとも金額が大きなものです。事務所物件にかかる費用は、どのような物件であるかによって大きく異なります。物件の場所、広さ、設備など、さまざまなバリエーションがあります。お金をかけないで開業したいのであれば、自宅開業という方法もあります。備品がそろっている貸しオフィスや、事務所と住居が一体化したSOHOマンションを借りれば物件費用を節約できるかもしれません。事務所物件の資金としては、礼金・敷金に加えて、半年~1年分の家賃を用意する必要があります。厳密には、家賃は運転資金の一部です。
2 備品と通信環境
借りた物件を事務所として機能させるためには、備品と通信環境が必要です。司法書士事務所の主な備品は、応接セットや事務机などの什器類と、パソコンやプリンターなどのIT機器です。通信環境としては、インターネット環境と、電話などが必要です。開業用のビジネスプランを選択すれば、一括で環境が整い、トラブルが発生したときも安心です。IT設備としてもう一つ考えたいのは、司法書士の業務支援システムです。システムを導入すると、ミスを減らし、業務を高速化できます。
特に、開業直後の方にオススメなのが、「司法くん」です。「司法くん」は圧倒的なコストパフォーマンスと専属のスペシャリストによるサポートが魅力です。「司法くん」はすでに1,800件以上の導入実績を誇っており、継続率は95.5%と、高い満足度を得ているシステムです。
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3 ホームページ
今日はどのような事業であれ、ホームページがある時代です。ホームページを業者に依頼すると30万円~50万円かかることもあります。WIXなどのホームページ作成サービスを使って、自分でホームページを作れば、その分の経費を節約できます。
4 司法書士会への登録・入会
司法書士として業務を行うためには、各地にある司法書士として登録することと、事務所がある場所の司法書士会に入会する必要があります。登録には、登録手数料25,000円と登録免許税30,000円が必要です。入会金は所属する司法書士会によって異なります。入会金の目安は35,000~50,000円です。司法書士には、司法書士として書類を作成したことを証明するための「職印」が必要です。「職印」を作る費用として、1万円程度必要です。
5 PRツール
名刺はもちろん、事務所の看板、表札プレートなど事務所と名前を印刷刻印したサインが必要です。名刺には用意したホームページのURLやQRコードを記載して自身のことを知ってもらいましょう。あらゆる媒体に使える肖像写真の準備をしておくと認知はもちろん、見込み客にとっての安心材料となります。ホームページに顔写真を掲載する場合には重要なテーマや事務所の方針など、わかりやすく心に響くようなフレーズをそえるとより訴求力が高まり、魅力的に映ります。ここは奮発してプロのカメラマンにお願いすることが先行投資となります。
6 デザインコスト
開業したばかりでは余裕資金がないかもしれませんが、事務所のロゴや事務所名の表記デザインなど視認性を高めることが集客につながります。開業する際のターゲットや立地、今後の戦略によってここは変わってくると思いますが、テーマカラーなどを決めてサイトやインテリアなど用意することもおすすめです。もちろんデザインなど力を入れなくても活躍する司法書士はたくさんいます。法人化の際などには是非取り入れたい必要経費です。
3 運転資金の内訳
次に運転資金の内訳を見ていきます。当面の運転資金として、半年~1年程分の資金を用意する必要があります。
1 司法書士会の会費
司法書士会には毎月会費を支払う必要があります。会費は所属する司法書士会によって異なります。会費の目安は月額25,000円~30,000円です。
2 営業経費・交際費
開業してすぐに十分な売上が上がることは、あまり期待できません。多くの場合、開業当初は営業や、人脈作りにお金と時間をかけることになります。チラシやパンフレットを作ってあいさつ回りや飛び込み営業するのにも、無料セミナーを開くのにも、お金がかかります。人脈づくりのためにさまざまな会合に出席するにしても、1回数千円かかるでしょう。営業や人脈作りは開業した司法書士にとって、とくに重要です。十分に活動できるだけのお金を準備しておきましょう。
3 事務所賃料
事務所を借りている場合、毎月一定額の賃料を支払う必要があります。
4 その他の経費
事務所を維持するためには、消耗品の補充、光熱水費、電気料金、電話やインターネットにかかる通信費など、種々雑多な経費が必要です。
4 開業に必要な資金の調達方法
司法書士事務所を開業するために必要な資金は、開業資金と当面の運転資金および生活費を合計した金額のお金です。資金を調達する方法は、自己資金と融資の2つです。できるだけ自己資金を準備して、足りない部分は融資で補います。司法書士事務所を開業するときに使える補助金もあります。
1 自己資金
最初に考えるべき資金は自己資金です。貯金して自己資金を準備しましょう。働きながら受験するのであれば、勉強中から貯金することも考えられます。試験合格後に数年間司法書士事務所に勤務するのであれば、その期間の給料の一部を貯金に回すことができます。借金をしたくないのであれば、自宅開業によって開業資金を減らすことができます。自己資金にこだわりすぎて、やりたいことをあきらめたり、生活に楽しみがなくなったりしないように注意しましょう。充実した生活はすべての基盤です。事業のビジョンが明確であれば、融資は避けるべきものではありません。
2 融資
自己資金で足りないお金は融資で調達します。国や地方の公的な融資制度を使うと、無担保・無保証でお金を借りることができ、利息の面でも有利です。国の制度としては、日本政策金融公庫の新創業融資制度があります。各自治体には、信用保証協会と地方の金融機関を連携させる融資の仕組みがあります。経営計画・事業計画が審査を通ると資金を借りることができます。
3 IT導入補助金
補助金とは、融資と違い、返済する必要がありません。国や地方自治体は、創業や、企業のIT化に力を入れており、いくつかの補助金制度を設けています。司法書士事務所を開業するときに使える補助金に、IT導入補助金があります。IT導入補助金は、日々のルーティン業務を効率化させるITツールや、情報を一元管理するクラウドシステム等、ITツールの導入に活用できる補助金です。司法書士の場合、IT導入補助金により「司法くん」などの業務支援システムを、半額で導入することができます。
5 まとめ
司法書士事務所を開業するときに用意するべき資金は、事務所の開設にかかる資金と、当面の間事務所を維持するための資金と生活を維持するための資金です。開業当初は売上が十分ではないので、持ち出しの日々が続きます。その期間を持ちこたえられるように資金を準備する必要があります。